徒然なる哲学日記

徒然なる哲学日記

日常生活の出来事にたいする考察(セネカの倫理書簡124通の英訳からの訳を公開してます)

セネカ 倫理書簡67 不健康と、苦痛への忍耐について

1. ありきたりな書き出しをすると、少しずつ春らしい天気になってきています。しかし、暑い日になると予想される夏に近づいてはいるものの、まだ涼しさが続いており、まだ春という確信も持てません。この時期はしばしば、冬の天気に逆戻りしますから。いまだ…

セネカ 倫理書簡66 徳の諸側面について

1. 僕はつい先日、かつての学友であるクララヌス*1と数年ぶりに再会しました。彼が老齢であることは、言うまでもなくお分かりになるでしょう。しかし、虚弱で儚い肉体と闘いながらも、彼の精神は確かに健康で、力強いものだったと言いましょう。というのも、…

セネカ 倫理書簡65 原因について

1. 僕は昨日一日を病気*1と分かち合いました。病は一日の午前を自分のものとしましたが、午後には僕に譲りました。それから、僕はまず読書によって自分の精神を試しました。そして、読書に耐えうることが分かると、僕は思い切って精神にもっと多くを要求し―—…

セネカ 倫理書簡64 哲学者の仕事について

1. 昨日君は、われわれと一緒でした。「昨日」だけと言ったら、君は不満に思ったかも知れません。ですから僕は、「われわれと」を付け加えたのです。僕とのことであれば、君はいつも僕と一緒にいますから。幾人かの友人が現れ、彼らのために普段よりいくらか…

セネカ 倫理書簡63 友を失った悲しみについて

1. 君の友人のフラックスが亡くなったことを残念に思います。しかし僕は君が、必要以上に悲嘆に暮れることを望みません。君が全く悲しむべきではないとは申しませんが、もっと善いやり方があります。しかし、そのような強固な不動心は、運命の支配をはるかに…

セネカ 倫理書簡62 善き交わりについて

1. われわれは、多くの仕事が自由な学問研究を妨げると信じ込ませようとする連中に騙されています。彼らは自分の仕事を偽り、それを増やし、自分で自分を忙しくしています。僕はといえば、ルキリウス君、時間は自由に扱っています。本当に、自由なのです。僕…

セネカ 倫理書簡61 喜んで死を迎えることについて

1. われわれがこれまで願ってきたことを、望むのを止めようではありませんか。少なくとも僕は、次のようにしています。すなわち、僕は老年時代には少年時代と同じことを望むのは止めました。このただ一つの目的のために僕の毎日毎夜は過ぎ、これが僕の仕事で…

セネカ 倫理書簡60 災いの祈りについて

1. 僕は苦情を申し上げ、訴状を起こし、怒りを立てます。君の乳母が、先生が、母親が君に願っていたことを、君は今も望むのですか?彼らがどんな災いを願っていたか、君はいまだに理解しないのですか*1?ああ、われわれの親族が願うことは、われわれにどれほ…

セネカ 倫理書簡59 快楽と喜びについて

1. 君の手紙は僕に大きな快楽*1をもたらしました。ストア派的な意味ではなく、通常の意味でこの言葉を使うことをお許し下さい。というのも、われわれストア派は快楽を悪と考えていますから。確かにそうかも知れません。しかし、心が楽しい状態にあることを表…

セネカ 倫理書簡58 存在について

1. われわれが使っている言葉の語彙がどれほど乏しいか、いえ、貧窮しているかを、僕は今日ほどはっきりと思い知らされた日はありませんでした*1。僕たちはたまたまプラトンについて話していて、沢山の議題が挙がったのですが、それらの議題は名称を必要とし…

セネカ 倫理書簡57 旅の試練について

1. バイアエからナポリに帰る時になって、僕は嵐になるのが容易に予測できたので、海路は避けようと考えました。けれども、陸路はどこも泥濘んでいたので、やはり船旅をしたのではないかと〔人から〕思えるほどでした。その日僕は、格闘選手の受ける運命の全…

セネカ 倫理書簡56 閑静なことと勉強について

1. 勉学のために引きこもる者にとって、閑静なこと以上に必要なものがあるとしたら、僕は死んだ方がましです!そら、あらゆる種類の騒音が僕の耳に鳴り響きます!僕が宿泊してる所は浴場の真上になります。自分の聴力を呪うほども大きな様々な騒音を想像して…

セネカ 倫理書簡55 ウァテイアの別荘について

1. 僕はちょうど駕籠に乗っての外出から帰ったところです。そして、座っていたのではなくまるで歩いて遠出したかのように疲れました。長時間運ばれるというのは辛いものですが、おそらくそれは自然に反することだからです。自然はわれわれに、自分自身で歩く…

セネカ 倫理書簡54 喘息と死について

1. 僕の病気は長い間治まっていましたが、突然それがぶり返しました。「何の病気ですか?」と君はお尋ねになる。君がそれを知りたいのはもっともですが、僕は本当に、何という病気か分からないのです。しかし、僕は或る言わば特別な病気に引き渡されました。…

セネカ 倫理書簡53 精神の過ちについて

1. 僕は何でも君の説得に応じます。ですから僕は、君に言われるまま船旅をしました。海が静かで穏やかになった時に出発しましたが、空はどんよりと曇っていて、いつもなら雨や嵐にすぐに変わるものです。それでも僕は、プテオリー*1と君の愛するパルテノメー…

セネカ 倫理書簡52 指導者を選ぶことについて

1. ルキリウス君、われわれを、目指してる所とは別の方向に引き込み、そこから離れたいと思っていたところにわれわれを駆り立てるこの力は何なのでしょうか?われわれの精神に反抗し、われわれが願うのを一度きりにすることを許さないのは何なのでしょうか*1…

セネカ 倫理書簡51 バイアエとモラルについて

1. 愛するルキリウス君、人は誰でも自分にできる限りのことをすべきです!君はあそこに、シチリアにそびえる最も名高い山であるエトナ山を持っています*1。(もっとも、メッサラ*2あるいはヴァルギウス*3が―—そのどちらもの本で僕は読んだのですが―—どうして…

セネカ 倫理書簡50 われわれの盲目とその治療について

1. 君が送ってくれてから何ヶ月も後に、君の手紙を受け取りました。ですから、君が今どんな状況か、届けてくれた人に聞くのは無意味だと思いました。彼がもしそれを覚えてるとしたら、彼の記憶力は大したものです!しかし、君がどこにいて何をしていようとも…

セネカ 倫理書簡49 生の短さについて

1. ルキリウス君、ある風景によって友人のことを思い出すというのは、確かに、怠慢で無精な人間の証でしょう。しかし、かつて訪れて親しんだ土地が、心の中に蓄えられていた思慕の念をかき立てます―—呼び戻すというよりは、記憶を休眠から覚まして。あたかも…

セネカ 倫理書簡48 哲学者にふさわしくない詭弁について

1. 旅の途中で君がくれた手紙への回答は―—旅と同じくらい長いものですが―—また後日お返しすることにしましょう。僕も引きこもって、君にどんな助言をするべきかを考えなければなりません。僕に相談する君の方でも、相談すべきかどうか長い間考えていたのです…

セネカ 倫理書簡47 主人と奴隷について

1. 君の所から来る人達の話から、君が家の奴隷たちと友好的に付き合っていると聞いて、嬉しく思っています。これは聡明で教養のある君にいっそうふさわしいことです。「彼らは奴隷だ」、と人々は言います。いいえ、人間です。「彼らは奴隷だ」いいえ、われわ…

セネカ 倫理書簡46 ルキリウスの新しい著作について

1. 君が僕に約束してくれていた本を受け取りました。僕は時間のある時にゆっくり読もうと思って、軽く見通すくらいのつもりでしたが、作品そのものに魅せられて、本全体を読み込むことになりました。このことから、君の本がどれほど素晴らしかったかがお分か…

セネカ 倫理書簡45 屁理屈の多い議論について

1. 君は今いる所では、書物が充分にないとこぼしています。しかし、読書はその量ではなく質が重要です。これと決めた書物を読むことは有益ですが、色んな種類の本を雑多に読むことは、気晴らしにしかなりません。目標とした地点に到達することを望む者は、多…

セネカ 倫理書簡44 哲学と家柄について

1. 君はまたしても僕に、自分は大した人物ではなく、まずは生まれ(家柄)が、次は運命が、君をぞんざいに扱ってきたと言い張ります。君は自分の手で自分自身を大衆から引き離し、人間の最高の幸福にまで引き上げることができるのに!哲学のよいところの一つは…

セネカ 倫理書簡43 人からの評判について

1. 君は誰にも見せず、誰にも知らせていなかったのに、この知らせが僕にどのように届き、また誰が話したのかとお尋ねですか?それは誰もがよく知っているあの、噂話というやつです。「なんと」君は言われる。「私は噂に挙がるほど大した人物ということですか…

セネカ 倫理書簡42 真の意味で価値のあるものについて

1. 君はかの友人に、彼が善き人物であるとすでに信じ込まされてしまったのでしょうか?しかし、人はすぐに善くなることも、善き人物として知られることもできません。僕が「善き人物」という時、どんな人物のことを意味してるかお分かりですか?君の友人のよ…

セネカ 倫理書簡41 われわれの内なる神について

1. 君が手紙に書いてくれたように、君が健全な理解に向かって努力しているのなら、君は君自身のためになる素晴らしいことをしているということです。その理解は君の手で得られるのですから、それを祈るのは馬鹿げたことです。天に向かって両手を上げたり、願…

セネカ 倫理書簡40 哲学者の談話にふさわしい話し方について

1. 君がたびたびお手紙をくれることに感謝します。というのも、君は君にできる唯一の方法で、君の本当の姿を僕に明らかにしてくれているのですから。手紙を受け取ると、僕はいつもすぐに君と一緒にいるような気持ちになります。不在の友人を心に思い浮かべる…

セネカ 倫理書簡39 高貴な志について

1. 僕は実は、君が求めた概要本を、丁寧に順序立てて完結にまとめて君のために準備しています。しかし、通常のやり方*1よりも、われわれが「breviaruim(概要)*2」——古きよき時代、本当のラテン語が話されていた時代には「summaruim(要約)」と呼んでいたもの…

セネカ 倫理書簡38 静かな会話について

1. 僕たちが手紙での互いのやりとりをもっと増やすべきだという君の意見はごもっともです。しかし、もっとも有益なものは会話から得られます。それは少しずつ魂に入り込んでいきますから。事前に準備され、大勢の前で行われる講義には、沢山の音声はあるかも…