1. 君が僕に約束してくれていた本を受け取りました。僕は時間のある時にゆっくり読もうと思って、軽く見通すくらいのつもりでしたが、作品そのものに魅せられて、本全体を読み込むことになりました。このことから、君の本がどれほど素晴らしかったかがお分かりになるでしょう。というのも、それらの文体は軽快に綴られおり、それでいて僕や君のいつもの作風とは異なり、一見すると、ティトゥス・リウィウスやエピクロスのものに思われましたから。さらには、その魅力に感激して引き込まれ、一気に読み通してしまいました。太陽が昼を告げ、空腹は僕を呼び、夕雲が脅かしましたが、僕は夢中で読んでいました。
2. 僕はただ嬉しいだけでなく、歓喜に包まれました!君は何という才を、何という魂を持っているのでしょう!本に中弛みがあったり、魅力的な箇所がたまにしか現れなかったりしたのであれば、僕はもっと「力強く」と付け加えたことでしょう。しかし、盛り上がりが雑に現れることはなく、文章の流れは滑らかで、力強くありながらしなやかであることを見出しました。それでいて、所々に現れる、君の温かさや、あちこちに見られる、君の優しさにも僕は気付きました。君の文体はとても高貴で、誉れ高いものです。君にはこのやり方を、この方針を続けて欲しいと思っています。君の選んだ題材もよいものでした。われわれは心を掴み、駆り立てるような有意義な題材をいつも選ばねばなりません。
3. この本についてはもう一度読んだ後に、より丁寧に論じることにしましょう。それまでの僕の評価は、まるで朗読されているものを聞いただけで自分では読んでいないようなものなので、いくらか不安定なものです。それもしっかり精査させて下さい。恐れる必要はありません。君は真実の評価を聞くでしょうから。君は何と幸福なのでしょう!君の本を読んだ人は誰も、君に嘘をつく必要などないのですから*1。ところが、嘘をつく必要がなくても、今の時代われわれは当然のように嘘を言います*2。お元気で。
・英語原文
Moral letters to Lucilius/Letter 46 - Wikisource, the free online library
・解説
文体について述べた書簡は、114が面白い。訳が待ちきれない人は、英語の原文を是非とも読まれたい。