1. 君は間違えています、ルキリウス君。もし贅沢な生活や道徳の軽視、あるいは各人が非難する、自分たちが生きている時代の悪徳が、われわれの時代に特有のものだと考えているのなら。それらは人類の欠陥であって、時代の欠陥ではありません。非難に値しない…
1. 君は或ることにずっと苛立ったり不平を言ったりしていますが、君が言うそれらの中で、実際に問題なのはただ一点、つまり君が不平を言っているということ自体だということを、理解していますでしょうか?僕に言わせれば、人が宇宙存在の何か*1を不幸だと考…
1. 君は一つ前の手紙(書簡94)で僕が、別の機会に論じると言った内容を先送りすることなく説明するよう求めています。つまり、ギリシャ人が「勧告的」と呼びわれわれローマ人が「教訓的」と呼ぶ哲学のこの部門が、われわれに完全な英知を与えるのに十分か、と…
1. 哲学には個々人の事例に適切な教訓*1を与える部門があり、それは人間全体に与えられるものではなく、たとえば、夫は妻に対してどう振舞うべきか、父は子供をどう育てるべきか、あるいは主人は奴隷をどう扱うべきかといったことを教えます。僕が思うに、或…
1. 君が手紙の中で、哲学者メトゥロナックス*1の死を嘆き、彼はもっと長生き出来たとか、長生きすべきであったと言っていますが、人間や物事について語る時の君の公正さが、この一事に対しては他の全ての人と同じように、君に欠いているように見えたのを残念…
1. 君と僕は、次の点において同意できるでしょう。つまり、外的なものは肉体のために求められること、肉体は魂のために貴ばれること、そして魂の内にはわれわれに仕える或る部分が存在し、それはわれわれが活動したり生命を維持することを可能にし、われわれ…
1. われらが友人のリーベラーリス*1は今、悲嘆に暮れています。ルグドゥーヌム*2の植民地を焼き尽くした大火災の知らせを受け取ったばかりだからです。こうした災害はどんな人をも動揺させるものですが、自分の祖国を心から愛している人物にはなおさらでしょ…
1. 誰が疑うことができましょうか、僕のルキリウス君。われわれが生きていることは不死なる神々の恩恵であり、善く生きることは哲学の恩恵であることを。哲学それ自体の恩恵*1を神々はわれわれに与えなかったのですから、善く生きることが単に生きることより…
1. 君が知りたいと望んでることは、英知に向かって急いでいる人にとって有益な事柄です。すなわち哲学を区分し、その巨体を個々の部門に分割することです。個々の部分を学ぶことで、われわれは全体をより容易に理解できるようになりますから。僕はただ、あた…
1. 自由な学問*1について僕がどう考えているかを知りたいと君はお望みです。僕の答えは次の通りです。僕は金儲けを目的とする学問は、尊重もしませんし、善いものとも考えません。そうした学問は打算的な技術であって、才知を訓練する限りにおいては有用であ…
1. 僕は「船に乗る前に難破*1」してしまいました。どうしてそのようになったかは申しません。君がこれも、ストア派の逆説パラドックスの一つに数え入れては困りますから。しかし、君が聞きたいとお望みなら、いやお望みでなくとも、この逆説が決して間違いで…
1. 僕は今まさにスキピオ・アフリカヌスの別荘*1で身を休めています。そして彼の霊と、偉大な勇士の墓であると僕に思われた祭壇に敬意を表した後で、君に手紙を書き送っています。彼の魂はもちろん、元の住処である天上に戻っていると僕は確信しています。そ…
1. 僕は君に配慮して、まだ議論が終わっていない面倒な問題のことは、顧みずにおりました。僕は、幸福な人生を完遂するためには美徳それ自体だけで十分な証明になるという、われらが学派の見解の一端を君に与えただけで満足していたのです。しかし君は僕に、…
1. 君のおっしゃるような旅、つまりは僕の怠慢を振り払ってくれる旅は、僕の健康と勉学のいずれにも有益であると思っています。なぜ健康に良いかはお分かりでしょう。読書への情熱が過剰なあまり、体のことをなおざりにして無精になっていても、人のお陰で体…
1. 君は僕の、毎日のことについて、その全てを教えて欲しいと言いました。そして、もし僕が日々のことを君に隠し立てしなければ、僕に対し良い評価を下さるのでしょう。確かにわれわれは、そのように生きるべきです。あたかも全ての人に見られているかのよう…
1. 僕はもう君のことを心配することはありません。「どの神を、」君はお尋ねになる。「あなたは私の保証人と定めたのですか?」お伝えしましょう。誰も欺くことのない神。正しく善良なものを愛する神です。君のより善き部分は安泰です。運命が君に、害を加え…
1. 君は恩知らずな人間に会ったと不平をこぼしています。もしこれが初めてのことなら、〔今までそうした人物に出くわさなかった〕君自身の幸運か、君の慎重さに感謝すべきです。しかしこの場合、慎重さは君を狭量にするだけです。なぜなら、君がもしそのよう…
1. 今日僕は、自分自身のおかげというよりは、全てのうるさい人々を惹きつける拳闘競技*1の試合のお陰で、ゆったりと過ごしています。誰も僕を邪魔したり、思索の流れを阻む者はありません。僕の思索はその自信のゆえ、より大胆に進んでいるのです。戸が開く…
1. 君からのお手紙をお待ちしていました。それにより、君のシチリア島の周遊旅行でどんな新しい発見があったのかを知り、とりわけカリュブディス*1に関しての更なる知識が得られることを期待して。スキュッラが岩であり、船乗りには実際はさほど恐れられてい…
1. 君がたびたび鼻風邪の症状に悩まされ、長く慢性的に続く風邪の後にくる熱の断続的な発作に苦しんでいると聞いて、僕も心苦しく思います。特に僕自身もこの種の病気を経験しており*1、初期の段階では軽く見ていましたから。僕はまだ若いうちは、苦痛に耐え…
1. 今日、「アレクサンドリア」船*1が突然われわれの眼前に現れました。通常、あらかじめ船隊の到着を知らせるために前もって送られる船です。それらは「郵便船」と呼ばれています。カンパニアの人たちはそれらを見て喜びます。プテオリー*2の群衆は皆ふ頭の…
1. 僕の毎日の行動を全て君に知らせないと、君は僕に怒って脅しをかけてきます。けれども、さあ見て下さい。君と僕は、どれほど率直な間柄で生きてるかを。なぜなら、僕は次のことをも君の耳に打ち明けるのですから。僕は或る哲学者*1の講義を聞いています。…
1. 君に対する僕の手紙が、あまり詳細に書かれていないと君はご不満のようです。とはいえ、気取って話すつもりもないのに、事細かに書く人があるでしょうか?僕の手紙は、君と一緒に腰掛けたり、散歩したりしながら話す時のようにしたいのです。つまり自然で…
1. 君の手紙は僕に喜びを与え、怠慢から呼び覚ましてくれました。また、長らくの間、鈍く無気力になっていた僕の記憶力を刺激してくれました。 親愛なるルキリウス君、幸福な人生に達するための最も良い方法は、立派なものこそが唯一の善だと信ずることであ…
1. 哲学に身を捧げる人達のことを、強情で反体制的で、行政官や帝王、あるいは公的な管理をしてる人々を軽蔑してると信じることは誤りであると、僕は考えます。というのも、これとは反対に、支配者ほど、哲学者にとって望ましい人はいないからです。それも当…
1. 君が僕にお尋ねの問題は、以前は僕にとっては明確なことで、深く考える必要はなく、僕は全くそれに通じていました。ですが、しばらく僕はその記憶を試していないので、すぐに思い出すことはできませんでした。僕は、長く開かれなかったため中がくっついて…
1. 君は僕と広大な海を隔てて離れていることも忘れて、僕に特別な問いを立て続けています。しかし、助言の価値の大半はそれが与えられた時期に左右されるため、ある問題に関しての僕の意見が君に届く頃には、反対の意見のほうが優れている、という結果に必然…
1. 久しぶりに、君が愛するポンペイを見てきました*1。そうして青春時代の思い出へと再び引き戻されました。その地で若い頃にしていたことが今でもできるような、あるいはついさっきまでしていたような、そんな気持ちになりました。2. ルキリウス君、われわ…
1. 僕は君が居場所を変えて、ある所から別の所へと走り回ることは好みません*1。その理由は、第一にそのような頻繁な移動は不安定な精神の証だからです。そして、精神はそのような物見遊山や放浪をやめない限り、閑暇な生活を経て強固なものへと成長すること…
1. 僕は君の計画に賛成です。引退して閑暇な生活に身を隠して下さい。しかし同時に、君の引退をも、隠しておきなさい。これを行うにあたり、ストア派の教えにではないとしても、その先例に従うものであることがお分かりになるでしょう。しかし、君は彼らの教…