徒然なる哲学日記

徒然なる哲学日記

日常生活の出来事にたいする考察(セネカの倫理書簡124通の英訳からの訳を公開してます)

セネカ 倫理書簡37 理性に従うことについて

1. 君は善き人物になることを約束し、その入隊を宣誓しました。それらは君を健全な英知へと導く最も強い鎖です。これを女々しくて楽な兵役だと言い張る者がいたならば、それは君を嘲笑してのことでしょう。君はそんなことに騙されてはいけません。この最も高…

セネカ 倫理書簡36 引退の価値について

1. 君の友人のことを、引退の陰に隠れ、名誉ある経歴を捨て去り、より多くのことを達成できたかも知れないのに、それら全てよりも、平穏を好んだという理由で悪く言う人達を軽蔑するように、彼を励ましてあげて下さい。これらの批判者に対しては、彼が自身の…

セネカ 倫理書簡35 同じ心を持つ者の友情について

1. 僕が君に勉強するよう強く勧めている時、僕は自分の仕事をしているのです。僕は君との間に友情を望んでいますが、それは君が君自身を進歩させるという仕事を始めない限り得られません。僕は今君に親しみを抱いていますが、君はまだ僕の親友ではありません…

セネカ 倫理書簡34 前途有望な弟子について

1. 君の行動と手紙から、君がどれだけ君自身を追い越したか―—普通の人はずっと以前に追い越してきましたが―—を理解するたびに、僕は心が躍り、嬉しさのあまり飛び跳ね、自分の年齢を追い払って、再び胸が熱くなるのを感じます。農夫は自分が植えた木が成長し…

セネカ 倫理書簡33 格言を学ぶことの無益さについて

1. 以前の手紙と同じように、君は僕がこの手紙を終える時、われわれの学派の偉人たちの何らかの格言を添えることを望んでいます。しかし彼らは精選された格言などに関心はありませんでした。彼らの功績はその全体が力強さに満ちています。一部のものだけを他…

セネカ 倫理書簡32 進歩について

1. 僕は君のことについて尋ねています。君のところから来る人全てに、君は何をしているか、どこで誰と過ごしているのかを聞いています。僕をごまかすことはできません。僕は君と共にいるのですから。あたかも僕が必ず君の行いの知らせを受け取るかのように、…

セネカ 倫理書簡31 セイレーンの歌声について

1. 今や僕は君を認めています、親愛なるルキリウス君。君はかつて約束していた人物になりつつあります。大衆が賞賛するものを足元に踏みつけ、最善を尽くすよう促す君の衝動に従って下さい。僕は君がかつて計画していた以上に、立派にも豊かになることも望み…

セネカ 倫理書簡30 征服者を征服することについて

1. 僕は、あの素晴らしい人物バッスス・アウフイディウス*1が健康を損ない、老年と闘うのをみてきました。しかし、それは既に彼に重くのしかかっているので、彼は立ち上がることはできません。老年期は彼に多大な影響を及ぼしました、そうです、全ての重みを…

セネカ 倫理書簡29 マルケリヌスの危機的な状況について

1. 君はわれらが友マルケリヌスについて尋ねており、彼がどのように過ごしているかを知りたがっています。彼はめったに僕のところには来ませんが、その理由は他でもなく、真実を聞くことを恐れているからです。彼は今のところその難を逃れていますが、聞く耳…

セネカ 倫理書簡28 不満を癒さんとしての旅について

1. 君だけがそのような経験をしたとお思いですか?それは目新しいものでしょうか?これほどの長旅と、多くの景色の変化の後でも、心の暗さと重苦しさを振り払うことができなかったことに驚いているのですか?君に必要なのは、気候の変化でなく魂の変化です。…

セネカ 倫理書簡27 永続きする善について

1. 「なぜ」君は言われる。「あなたは私に忠告をなさるのですか?実際、あなたは自分自身への忠告を済ませ、自身の過ちを既に正されたのですか?それゆえあなたには、他者を改善する余裕があるというのですか?」いいえ、僕は自分が病気なのに同胞の治療を引…

セネカ 倫理書簡26 老年と死について

1. 僕はつい最近君に、僕が老年に近づいているという話をしました*1が、今や、老年を過ぎ去ってしまったのではないかと心配しています。というのも、僕の年齢、あるいは少なくとも僕の体には、別の言葉が相応しいからです。老年期とは疲れた年代を意味するの…

セネカ 倫理書簡25 心の改善について

1. われわれの二人の友人に関しては、それぞれ違ったやり方で対処する必要があります。一方の過ちは正され、もう一方の過ちは完全に潰されねばなりません。言えることは言ってやりましょう。彼*1の心を傷つけることになるかも知れませんが、それが彼に対する…

セネカ 倫理書簡24 死を軽蔑することについて

1. 君は手紙で、怒りに満ちた相手側が君を脅かしている裁判の結果が心配だとおっしゃいます。そして君は、僕からの助言で、より楽観的な結末を思い描き、希望へと導かれ安心することができることを期待しています。実際、起きたらすぐにでもそれに耐えねばな…

セネカ 倫理書簡23 哲学から得られる真の喜びについて

1. 僕が手紙に、この冬はどれほど穏やかだったとか―—実際、短くて暖かかったですが―—、この春は季節外れの寒さでどれほど過ごしにくいかなど、言葉に窮した人達のように、その他のあらゆるつまらないことを書くとお思いですか?いいえ、僕は君と僕自身のどち…

セネカ 倫理書簡22 中途半端に退くことの無益さについて

1. 君は今や、見栄えだけの堕落した生活から、自分自身を退ける必要があることを理解しています。しかし、どうすればそれが達成できるのかを知りません。その場に居合わせないとうまく助言できないことがあります。医者は適切な食事や入浴の時間を、手紙で指…

セネカ 倫理書簡21 僕の手紙が君にもたらす栄誉について

1. 君がくれた手紙に書かれているような人達は、問題の多い連中だと考えているのですか?最も大きな問題は君自身の中にあります。君がつまづく原因もそうです。君は自分が何を望んでいるかも知りません。正しい道を承認はしていても、それに従うことはありま…

セネカ 倫理書簡20 教えとその実践について

1. 君が健全に過ごし、自分をいつかは自分自身の指導者になるに値すると見做しているなら、僕は嬉しく思います。というのも、君が打ちのめされている、抜け出すことの叶わない洪水から君を引きあげることができたなら、それは僕の功績になりますから。しかし…

セネカ 倫理書簡19 世俗の生活からの引退について

1. 君からの手紙を貰う度、僕は胸が希望で満たされ、とても大きな喜びを抱きます。そして今やそれは君に関しての単なる保証ではなく、確証になっています。そして君が、次のように進歩するようお願いするし、祈りもします。とういのも、友人のために祈ること…

セネカ 倫理書簡18 祭日と少食について

1. 十二月になりましたが、街は汗だくです*1。贅沢なお祭り騒ぎの許可が公布されましたから。まるでサトゥルナリア祭が通常の仕事の日とはまったく異なるものであるかのように、人々は大掛かりな準備で沸き返っています*2。しかし実際は、何ら異なるものでは…

セネカ 倫理書簡17 哲学と富について

1. もし君が賢明でありたいなら、そんなものは全て投げ捨てて下さい。というよりむしろ、賢明になるために、健全な精神に向かって全速力で、全力で努力して下さい。何らかの束縛が君を妨害するというのなら、それをほどくか、断ち切って下さい。「しかし」君…

セネカ 倫理書簡16 哲学—人生の導き手—について

1. ルキリウス君、君もよく分っているように、英知を学ぶことなしには、幸福に生きることはおろか、生きることに我慢することもできません。君はまた、幸福な生は、英知が完成した時に達成されることも知っています。しかもそれは、始めたばかりであっても、…

セネカ 倫理書簡15 筋肉と頭脳について

1. 古いローマ人の習わしで、今も続いているものがあります。手紙の冒頭に、「ご健勝にてお過ごしのこと慶び申し上げます。当方も元気です」と付け加えるものです。われわれなら、こう言うのがよいでしょう。「哲学に精進のこと慶び申し上げます」これこそが…

セネカ 倫理書簡14 世間から身を引く理由について

1. 実を言うとわれわれはみな、自分の肉体に対して生まれついての愛着を持ち、その世話を任せられています。僕は、肉体は決して甘やかされてはならないと言ってる訳ではありません。しかし、われわれは肉体の奴隷になってはなりません*1。肉体の欲求のために…

セネカ 倫理書簡13 根拠のない恐怖について

1. 君が優れた精神をもっていることを僕は知っています。というのも、困難を克服するための健全で力強い教えを身に着けるより前から、君は誇りをもって運命と戦っていました。そして、運命と組み合って自分自身の力を試してる今、それはいっそうの真実です。…

セネカ 倫理書簡12 老年について

1. 僕はどこを向いても、自分が年老いたことの証を見せつけられます。最近郊外の別荘を訪れたのですが、その老朽化して崩れかけた建物の修繕費用に、僕はケチをつけました。別荘番ははひび割れは彼の不注意のよるものではないと訴えました。「できる限りのこ…

セネカ 倫理書簡11 内気さや赤面について

1. 君の友人と話す機会があり、とても優れた人物と見受けられました。彼と話してすぐに、彼がどのような精神と思想を持っているか、そして彼がどれほど進歩を遂げているかを示してくれました。彼は僕が抱く期待に、必ず応えてさらに進歩するでしょう。という…

セネカ 倫理書簡10 一人で生きることについて

1. 僕は自分の意見を変える気はさらさらありません。大勢を避け、少数を避け、一人でいることも避けて下さい。君が喜んで時間を分かち合いたいと思えるような人を、僕は知りません。そして、僕が君に関してどんな意見を持ってるかというと、僕は思い切って君…

セネカ 倫理書簡9 哲学と友情について

1. 君はエピクロスが友人に宛てたある手紙の中で、賢者は自給自足しており、そのために友人を必要としないと考える人々を非難したことが、正しいのかどうか知りたがっています。これはスティルボン*1や、最高善は無感動の魂にあると信じる人々に対して、エピ…

セネカ 倫理書簡8 哲学者の隠棲について

1. 君はおっしゃるでしょう。「あなたは私に、群衆を避け、人々の間から退き、自分自身の良心に満足するよう命じますが、活発な仕事の最中に死ぬことを命ずるあなたがたの教えは、どこにいったのでしょう?」僕が君に時おり奨めているような道のとおりに、僕…