徒然なる哲学日記

徒然なる哲学日記

日常生活の出来事にたいする考察(セネカの倫理書簡124通の英訳からの訳を公開してます)

2023-01-01から1年間の記事一覧

セネカ 倫理書簡77 自ら命を絶つことについて

1. 今日、「アレクサンドリア」船*1が突然われわれの眼前に現れました。通常、あらかじめ船隊の到着を知らせるために前もって送られる船です。それらは「郵便船」と呼ばれています。カンパニアの人たちはそれらを見て喜びます。プテオリー*2の群衆は皆ふ頭の…

セネカ 倫理書簡76 老年期に英知を学ぶことについて

1. 僕の毎日の行動を全て君に知らせないと、君は僕に怒って脅しをかけてきます。けれども、さあ見て下さい。君と僕は、どれほど率直な間柄で生きてるかを。なぜなら、僕は次のことをも君の耳に打ち明けるのですから。僕は或る哲学者*1の講義を聞いています。…

セネカ 倫理書簡75 魂の病について

1. 君に対する僕の手紙が、あまり詳細に書かれていないと君はご不満のようです。とはいえ、気取って話すつもりもないのに、事細かに書く人があるでしょうか?僕の手紙は、君と一緒に腰掛けたり、散歩したりしながら話す時のようにしたいのです。つまり自然で…

セネカ 倫理書簡74 世俗的な喜びから逃れるための美徳について

1. 君の手紙は僕に喜びを与え、怠慢から呼び覚ましてくれました。また、長らくの間、鈍く無気力になっていた僕の記憶力を刺激してくれました。 親愛なるルキリウス君、幸福な人生に達するための最も良い方法は、立派なものこそが唯一の善だと信ずることであ…

セネカ 倫理書簡73 哲学者と帝王について

1. 哲学に身を捧げる人達のことを、強情で反体制的で、行政官や帝王、あるいは公的な管理をしてる人々を軽蔑してると信じることは誤りであると、僕は考えます。というのも、これとは反対に、支配者ほど、哲学者にとって望ましい人はいないからです。それも当…

セネカ 倫理書簡72 哲学の敵としての実務について

1. 君が僕にお尋ねの問題は、以前は僕にとっては明確なことで、深く考える必要はなく、僕は全くそれに通じていました。ですが、しばらく僕はその記憶を試していないので、すぐに思い出すことはできませんでした。僕は、長く開かれなかったため中がくっついて…

セネカ 倫理書簡71 最高善について

1. 君は僕と広大な海を隔てて離れていることも忘れて、僕に特別な問いを立て続けています。しかし、助言の価値の大半はそれが与えられた時期に左右されるため、ある問題に関しての僕の意見が君に届く頃には、反対の意見のほうが優れている、という結果に必然…

セネカ 倫理書簡70 死ぬべき時について

1. 久しぶりに、君が愛するポンペイを見てきました*1。そうして青春時代の思い出へと再び引き戻されました。その地で若い頃にしていたことが今でもできるような、あるいはついさっきまでしていたような、そんな気持ちになりました。2. ルキリウス君、われわ…

セネカ 倫理書簡69 平穏と不穏について

1. 僕は君が居場所を変えて、ある所から別の所へと走り回ることは好みません*1。その理由は、第一にそのような頻繁な移動は不安定な精神の証だからです。そして、精神はそのような物見遊山や放浪をやめない限り、閑暇な生活を経て強固なものへと成長すること…

セネカ 倫理書簡68 英知と隠棲について

1. 僕は君の計画に賛成です。引退して閑暇な生活に身を隠して下さい。しかし同時に、君の引退をも、隠しておきなさい。これを行うにあたり、ストア派の教えにではないとしても、その先例に従うものであることがお分かりになるでしょう。しかし、君は彼らの教…

セネカ 倫理書簡67 不健康と、苦痛への忍耐について

1. ありきたりな書き出しをすると、少しずつ春らしい天気になってきています。しかし、暑い日になると予想される夏に近づいてはいるものの、まだ涼しさが続いており、まだ春という確信も持てません。この時期はしばしば、冬の天気に逆戻りしますから。いまだ…

セネカ 倫理書簡66 徳の諸側面について

1. 僕はつい先日、かつての学友であるクララヌス*1と数年ぶりに再会しました。彼が老齢であることは、言うまでもなくお分かりになるでしょう。しかし、虚弱で儚い肉体と闘いながらも、彼の精神は確かに健康で、力強いものだったと言いましょう。というのも、…

セネカ 倫理書簡65 原因について

1. 僕は昨日一日を病気*1と分かち合いました。病は一日の午前を自分のものとしましたが、午後には僕に譲りました。それから、僕はまず読書によって自分の精神を試しました。そして、読書に耐えうることが分かると、僕は思い切って精神にもっと多くを要求し―—…

セネカ 倫理書簡64 哲学者の仕事について

1. 昨日君は、われわれと一緒でした。「昨日」だけと言ったら、君は不満に思ったかも知れません。ですから僕は、「われわれと」を付け加えたのです。僕とのことであれば、君はいつも僕と一緒にいますから。幾人かの友人が現れ、彼らのために普段よりいくらか…

セネカ 倫理書簡63 友を失った悲しみについて

1. 君の友人のフラックスが亡くなったことを残念に思います。しかし僕は君が、必要以上に悲嘆に暮れることを望みません。君が全く悲しむべきではないとは申しませんが、もっと善いやり方があります。しかし、そのような強固な不動心は、運命の支配をはるかに…

セネカ 倫理書簡62 善き交わりについて

1. われわれは、多くの仕事が自由な学問研究を妨げると信じ込ませようとする連中に騙されています。彼らは自分の仕事を偽り、それを増やし、自分で自分を忙しくしています。僕はといえば、ルキリウス君、時間は自由に扱っています。本当に、自由なのです。僕…

セネカ 倫理書簡61 喜んで死を迎えることについて

1. われわれがこれまで願ってきたことを、望むのを止めようではありませんか。少なくとも僕は、次のようにしています。すなわち、僕は老年時代には少年時代と同じことを望むのは止めました。このただ一つの目的のために僕の毎日毎夜は過ぎ、これが僕の仕事で…

セネカ 倫理書簡60 災いの祈りについて

1. 僕は苦情を申し上げ、訴状を起こし、怒りを立てます。君の乳母が、先生が、母親が君に願っていたことを、君は今も望むのですか?彼らがどんな災いを願っていたか、君はいまだに理解しないのですか*1?ああ、われわれの親族が願うことは、われわれにどれほ…

セネカ 倫理書簡59 快楽と喜びについて

1. 君の手紙は僕に大きな快楽*1をもたらしました。ストア派的な意味ではなく、通常の意味でこの言葉を使うことをお許し下さい。というのも、われわれストア派は快楽を悪と考えていますから。確かにそうかも知れません。しかし、心が楽しい状態にあることを表…

セネカ 倫理書簡58 存在について

1. われわれが使っている言葉の語彙がどれほど乏しいか、いえ、貧窮しているかを、僕は今日ほどはっきりと思い知らされた日はありませんでした*1。僕たちはたまたまプラトンについて話していて、沢山の議題が挙がったのですが、それらの議題は名称を必要とし…

セネカ 倫理書簡57 旅の試練について

1. バイアエからナポリに帰る時になって、僕は嵐になるのが容易に予測できたので、海路は避けようと考えました。けれども、陸路はどこも泥濘んでいたので、やはり船旅をしたのではないかと〔人から〕思えるほどでした。その日僕は、格闘選手の受ける運命の全…

セネカ 倫理書簡56 閑静なことと勉強について

1. 勉学のために引きこもる者にとって、閑静なこと以上に必要なものがあるとしたら、僕は死んだ方がましです!そら、あらゆる種類の騒音が僕の耳に鳴り響きます!僕が宿泊してる所は浴場の真上になります。自分の聴力を呪うほども大きな様々な騒音を想像して…

セネカ 倫理書簡55 ウァテイアの別荘について

1. 僕はちょうど駕籠に乗っての外出から帰ったところです。そして、座っていたのではなくまるで歩いて遠出したかのように疲れました。長時間運ばれるというのは辛いものですが、おそらくそれは自然に反することだからです。自然はわれわれに、自分自身で歩く…

セネカ 倫理書簡54 喘息と死について

1. 僕の病気は長い間治まっていましたが、突然それがぶり返しました。「何の病気ですか?」と君はお尋ねになる。君がそれを知りたいのはもっともですが、僕は本当に、何という病気か分からないのです。しかし、僕は或る言わば特別な病気に引き渡されました。…

セネカ 倫理書簡53 精神の過ちについて

1. 僕は何でも君の説得に応じます。ですから僕は、君に言われるまま船旅をしました。海が静かで穏やかになった時に出発しましたが、空はどんよりと曇っていて、いつもなら雨や嵐にすぐに変わるものです。それでも僕は、プテオリー*1と君の愛するパルテノメー…

セネカ 倫理書簡52 指導者を選ぶことについて

1. ルキリウス君、われわれを、目指してる所とは別の方向に引き込み、そこから離れたいと思っていたところにわれわれを駆り立てるこの力は何なのでしょうか?われわれの精神に反抗し、われわれが願うのを一度きりにすることを許さないのは何なのでしょうか*1…

セネカ 倫理書簡51 バイアエとモラルについて

1. 愛するルキリウス君、人は誰でも自分にできる限りのことをすべきです!君はあそこに、シチリアにそびえる最も名高い山であるエトナ山を持っています*1。(もっとも、メッサラ*2あるいはヴァルギウス*3が―—そのどちらもの本で僕は読んだのですが―—どうして…

セネカ 倫理書簡50 われわれの盲目とその治療について

1. 君が送ってくれてから何ヶ月も後に、君の手紙を受け取りました。ですから、君が今どんな状況か、届けてくれた人に聞くのは無意味だと思いました。彼がもしそれを覚えてるとしたら、彼の記憶力は大したものです!しかし、君がどこにいて何をしていようとも…

セネカ 倫理書簡49 生の短さについて

1. ルキリウス君、ある風景によって友人のことを思い出すというのは、確かに、怠慢で無精な人間の証でしょう。しかし、かつて訪れて親しんだ土地が、心の中に蓄えられていた思慕の念をかき立てます―—呼び戻すというよりは、記憶を休眠から覚まして。あたかも…

セネカ 倫理書簡48 哲学者にふさわしくない詭弁について

1. 旅の途中で君がくれた手紙への回答は―—旅と同じくらい長いものですが―—また後日お返しすることにしましょう。僕も引きこもって、君にどんな助言をするべきかを考えなければなりません。僕に相談する君の方でも、相談すべきかどうか長い間考えていたのです…