徒然なる哲学日記

徒然なる哲学日記

日常生活の出来事にたいする考察(セネカの倫理書簡124通の英訳からの訳を公開してます)

2023-01-01から1年間の記事一覧

セネカ 倫理書簡47 主人と奴隷について

1. 君の所から来る人達の話から、君が家の奴隷たちと友好的に付き合っていると聞いて、嬉しく思っています。これは聡明で教養のある君にいっそうふさわしいことです。「彼らは奴隷だ」、と人々は言います。いいえ、人間です。「彼らは奴隷だ」いいえ、われわ…

セネカ 倫理書簡46 ルキリウスの新しい著作について

1. 君が僕に約束してくれていた本を受け取りました。僕は時間のある時にゆっくり読もうと思って、軽く見通すくらいのつもりでしたが、作品そのものに魅せられて、本全体を読み込むことになりました。このことから、君の本がどれほど素晴らしかったかがお分か…

セネカ 倫理書簡45 屁理屈の多い議論について

1. 君は今いる所では、書物が充分にないとこぼしています。しかし、読書はその量ではなく質が重要です。これと決めた書物を読むことは有益ですが、色んな種類の本を雑多に読むことは、気晴らしにしかなりません。目標とした地点に到達することを望む者は、多…

セネカ 倫理書簡44 哲学と家柄について

1. 君はまたしても僕に、自分は大した人物ではなく、まずは生まれ(家柄)が、次は運命が、君をぞんざいに扱ってきたと言い張ります。君は自分の手で自分自身を大衆から引き離し、人間の最高の幸福にまで引き上げることができるのに!哲学のよいところの一つは…

セネカ 倫理書簡43 人からの評判について

1. 君は誰にも見せず、誰にも知らせていなかったのに、この知らせが僕にどのように届き、また誰が話したのかとお尋ねですか?それは誰もがよく知っているあの、噂話というやつです。「なんと」君は言われる。「私は噂に挙がるほど大した人物ということですか…

セネカ 倫理書簡42 真の意味で価値のあるものについて

1. 君はかの友人に、彼が善き人物であるとすでに信じ込まされてしまったのでしょうか?しかし、人はすぐに善くなることも、善き人物として知られることもできません。僕が「善き人物」という時、どんな人物のことを意味してるかお分かりですか?君の友人のよ…

セネカ 倫理書簡41 われわれの内なる神について

1. 君が手紙に書いてくれたように、君が健全な理解に向かって努力しているのなら、君は君自身のためになる素晴らしいことをしているということです。その理解は君の手で得られるのですから、それを祈るのは馬鹿げたことです。天に向かって両手を上げたり、願…

セネカ 倫理書簡40 哲学者の談話にふさわしい話し方について

1. 君がたびたびお手紙をくれることに感謝します。というのも、君は君にできる唯一の方法で、君の本当の姿を僕に明らかにしてくれているのですから。手紙を受け取ると、僕はいつもすぐに君と一緒にいるような気持ちになります。不在の友人を心に思い浮かべる…

セネカ 倫理書簡39 高貴な志について

1. 僕は実は、君が求めた概要本を、丁寧に順序立てて完結にまとめて君のために準備しています。しかし、通常のやり方*1よりも、われわれが「breviaruim(概要)*2」——古きよき時代、本当のラテン語が話されていた時代には「summaruim(要約)」と呼んでいたもの…

セネカ 倫理書簡38 静かな会話について

1. 僕たちが手紙での互いのやりとりをもっと増やすべきだという君の意見はごもっともです。しかし、もっとも有益なものは会話から得られます。それは少しずつ魂に入り込んでいきますから。事前に準備され、大勢の前で行われる講義には、沢山の音声はあるかも…

セネカ 倫理書簡37 理性に従うことについて

1. 君は善き人物になることを約束し、その入隊を宣誓しました。それらは君を健全な英知へと導く最も強い鎖です。これを女々しくて楽な兵役だと言い張る者がいたならば、それは君を嘲笑してのことでしょう。君はそんなことに騙されてはいけません。この最も高…

セネカ 倫理書簡36 引退の価値について

1. 君の友人のことを、引退の陰に隠れ、名誉ある経歴を捨て去り、より多くのことを達成できたかも知れないのに、それら全てよりも、平穏を好んだという理由で悪く言う人達を軽蔑するように、彼を励ましてあげて下さい。これらの批判者に対しては、彼が自身の…

セネカ 倫理書簡35 同じ心を持つ者の友情について

1. 僕が君に勉強するよう強く勧めている時、僕は自分の仕事をしているのです。僕は君との間に友情を望んでいますが、それは君が君自身を進歩させるという仕事を始めない限り得られません。僕は今君に親しみを抱いていますが、君はまだ僕の親友ではありません…

セネカ 倫理書簡34 前途有望な弟子について

1. 君の行動と手紙から、君がどれだけ君自身を追い越したか―—普通の人はずっと以前に追い越してきましたが―—を理解するたびに、僕は心が躍り、嬉しさのあまり飛び跳ね、自分の年齢を追い払って、再び胸が熱くなるのを感じます。農夫は自分が植えた木が成長し…

セネカ 倫理書簡33 格言を学ぶことの無益さについて

1. 以前の手紙と同じように、君は僕がこの手紙を終える時、われわれの学派の偉人たちの何らかの格言を添えることを望んでいます。しかし彼らは精選された格言などに関心はありませんでした。彼らの功績はその全体が力強さに満ちています。一部のものだけを他…

セネカ 倫理書簡32 進歩について

1. 僕は君のことについて尋ねています。君のところから来る人全てに、君は何をしているか、どこで誰と過ごしているのかを聞いています。僕をごまかすことはできません。僕は君と共にいるのですから。あたかも僕が必ず君の行いの知らせを受け取るかのように、…

セネカ 倫理書簡31 セイレーンの歌声について

1. 今や僕は君を認めています、親愛なるルキリウス君。君はかつて約束していた人物になりつつあります。大衆が賞賛するものを足元に踏みつけ、最善を尽くすよう促す君の衝動に従って下さい。僕は君がかつて計画していた以上に、立派にも豊かになることも望み…

セネカ 倫理書簡30 征服者を征服することについて

1. 僕は、あの素晴らしい人物バッスス・アウフイディウス*1が健康を損ない、老年と闘うのをみてきました。しかし、それは既に彼に重くのしかかっているので、彼は立ち上がることはできません。老年期は彼に多大な影響を及ぼしました、そうです、全ての重みを…

セネカ 倫理書簡29 マルケリヌスの危機的な状況について

1. 君はわれらが友マルケリヌスについて尋ねており、彼がどのように過ごしているかを知りたがっています。彼はめったに僕のところには来ませんが、その理由は他でもなく、真実を聞くことを恐れているからです。彼は今のところその難を逃れていますが、聞く耳…

セネカ 倫理書簡28 不満を癒さんとしての旅について

1. 君だけがそのような経験をしたとお思いですか?それは目新しいものでしょうか?これほどの長旅と、多くの景色の変化の後でも、心の暗さと重苦しさを振り払うことができなかったことに驚いているのですか?君に必要なのは、気候の変化でなく魂の変化です。…

セネカ 倫理書簡27 永続きする善について

1. 「なぜ」君は言われる。「あなたは私に忠告をなさるのですか?実際、あなたは自分自身への忠告を済ませ、自身の過ちを既に正されたのですか?それゆえあなたには、他者を改善する余裕があるというのですか?」いいえ、僕は自分が病気なのに同胞の治療を引…

セネカ 倫理書簡26 老年と死について

1. 僕はつい最近君に、僕が老年に近づいているという話をしました*1が、今や、老年を過ぎ去ってしまったのではないかと心配しています。というのも、僕の年齢、あるいは少なくとも僕の体には、別の言葉が相応しいからです。老年期とは疲れた年代を意味するの…

セネカ 倫理書簡25 心の改善について

1. われわれの二人の友人に関しては、それぞれ違ったやり方で対処する必要があります。一方の過ちは正され、もう一方の過ちは完全に潰されねばなりません。言えることは言ってやりましょう。彼*1の心を傷つけることになるかも知れませんが、それが彼に対する…

セネカ 倫理書簡24 死を軽蔑することについて

1. 君は手紙で、怒りに満ちた相手側が君を脅かしている裁判の結果が心配だとおっしゃいます。そして君は、僕からの助言で、より楽観的な結末を思い描き、希望へと導かれ安心することができることを期待しています。実際、起きたらすぐにでもそれに耐えねばな…

セネカ 倫理書簡23 哲学から得られる真の喜びについて

1. 僕が手紙に、この冬はどれほど穏やかだったとか―—実際、短くて暖かかったですが―—、この春は季節外れの寒さでどれほど過ごしにくいかなど、言葉に窮した人達のように、その他のあらゆるつまらないことを書くとお思いですか?いいえ、僕は君と僕自身のどち…

セネカ 倫理書簡22 中途半端に退くことの無益さについて

1. 君は今や、見栄えだけの堕落した生活から、自分自身を退ける必要があることを理解しています。しかし、どうすればそれが達成できるのかを知りません。その場に居合わせないとうまく助言できないことがあります。医者は適切な食事や入浴の時間を、手紙で指…