「何か一つ、得意なことや好きなことを見つけ、それを武器に仕事をしろ」とか何とか寝言を言うバカがいた。そいつのしている仕事といえば、職場に長くいるだけの人が割り当てられるポストにいて、適当に書類を確認したり、適当な思いつきを人に指示するような要するに「誰でもできる」仕事だった。小泉進次郎が何か一つでも得意なことを持っていたようには見えないし、実際には世間では、本当の意味で一芸に秀でている人というのは冷遇され差別されがちだ。そもそもこんな発言は無能なのに自分がとりわけ優れてると思ってる人間の妄言なので聞き流して構わない。
「一芸に秀でると、隙間産業で儲けることができる」。バカ言うな。みんながみんな隙間産業で儲けるような社会になったら、エッセンシャルワークがなくなり、誰も食べていけない世界になる。youtuberだのひろゆきだの訳の分からないセコい方法で儲けようとする人間だらけになったら世の中成り立たない。野球選手より毎日みんなが食べる米を作ってる農家の人間とか、老人を介護してる人が偉いのは当たり前だろう。隙間産業でセコく成功しようなんていう発想がそもそも下品なのだ。別に嫌なことをして金を儲ける必要ははいが、世の中食べ物とか資源がどういうバランスで流通してるから知っておくべきである。知っていたら、そんな恥ずべき方法で金を儲けようなどとは思わず、然るべき仕事をほどほどにして、プライベートの時間で人生を充実させればいい。愚にもつかない姑息なテクニックを「一芸」などと称しそれを使ってせせこましく稼ぐことを「隙間産業で成功する」などと威張るような人間には救いようがない。
パワハラも一種の隙間産業である。まともに仕事をしないで部下や後輩を恫喝して、何か成功を得ようとしている。チヤホヤされたいなら普通の仕事を普通にすればいいだけなのに、それは何かものすごい恥だとでも言わんばかりに彼等は人に仕事を押し付けたり外注したり、考えないでいたりすることを何か素晴らしい賞賛されるべきライフハックだと信じて疑わない。普通のことを普通にやってプライベートの時間を静かに充実させればいくらでも無限に幸福になれるのに、彼等は何故かあえてそうしない。狭い隙間に欲望で膨れ上がったぶくぶくの魂を無理に詰め込み、矮小な「成功」を堪能しようと血を吐くような思いで追求する。
「隙間産業」なんかでせせこましく儲けようとするのはやめたほうがいい。結局人は素朴な道徳や真面目に働くことの中に穏やかさや居心地の良さを感じるし、増してや承認欲求や過度の性欲のためにそんなものに固執する人間が増えたら、この世は地獄になるだろう。もっともマトモに働く人間が殆どいない今の日本は、すでにウクライナ以上の地獄かも知れないが。